「本気を根気強く」 今年で就任40年 前橋育英サッカー部・山田耕介監督の変わらない情熱に迫る(22/12/26)

「本気を根気強く」 今年で就任40年 前橋育英サッカー部・山田耕介監督の変わらない情熱に迫る(22/12/26)

「本気を根気強く」 今年で就任40年 前橋育英サッカー部・山田耕介監督の変わらない情熱に迫る(22/12/26)

今月28日開幕の全国高校サッカー選手権に出場する前橋育英高校。
今年で就任40年を迎えた山田耕介監督の変わらない情熱に迫りました。

山田耕介監督63歳。前橋育英サッカー部一筋で、今年4月、就任40年を迎えた。
就任から36年目にして、群馬県勢初の選手権全国制覇に導いた。輩出したプロは100人を超える。山田監督は、どのように常勝軍団を築き上げたのか。監督の日常から、40年間変わらない情熱が見えてきた。

監督の朝は早い。
朝6時半、学校へと到着。1日の流れや今後のスケジュールを確認する。7時半にはサッカー部の朝練へ。少しすると、スタッフ陣は監督室へと集まる。

部員がおよそ150人もいるサッカー部は、カテゴリーごとにスタッフを配置していて、情報共有のために、毎朝ミーティングが行われている。

「それぞれのカテゴリーに分かれてトレーニングをやっているので様子とか日程の確認とか。スタッフのミーティングはものすごく重要だと思います。」(山田監督)

山田監督は、長崎県出身。高校時代は島原商業で、今年1月に亡くなった名将・小嶺忠敏監督の指導を受ける。3年生の時にはキャプテンを務め、夏のIH全国優勝を経験した。

小嶺監督は、30年前のインタビューで、教え子のことを次のように語っていた。
「私に感動を与えてくれた生徒です。当時のキャプテンをしておりましてね。どちらかと言えば器用なほうじゃございませんでしたけどもね、非常にね運動量の多い、そしてまた頑張り屋でしたね。」(小嶺監督)

恩師の背中を追って指導者の道へと進み、就任してまもない5年目にして前橋育英を初めての全国選手権に導いた。

2年前に学校長を退任し、現在は「学監」として高校全体を補佐する立場に就いている。
午前中の空き時間に行っているのが「分析」だ。
自分のチームや対戦相手の試合映像を何度も見て、自ら編集。攻撃、守備など項目別にまとめると、ミーティングで選手たちに伝えている。

「分析を詳細にすればするほど、いろんな動きが見えてくる。やればやるほど詳細にすべてが分かってくるというのは感じています。」(山田監督)

最新の戦術の研究にも余念がない。取り出したのは、コロナ禍で活動できない期間に監督がまとめたという戦術資料。パワーポイントでおよそ100枚にも及ぶ。

「自分自身も学んでいかないと。サッカーってものすごい進化しているんですよね。だから古い考え方でやっているとおそらくダメです。昔みたいにパス&ゴーみたいな裏を狙ってって、たしかにそれは必要なんだけど、そうじゃなくて今の近代サッカーとか学んでいかないと選手たちの今後もダメだと思います。」(山田監督)

午後4時、トレーニングが始まる。外部の会議など特別な理由を除き毎日練習を見て指導にあたる。指導の中で、40年間ずっと大切にしているのが…、「人間力」だ。

「サッカーを伸ばすためには人間的な要素が(必要で)ちゃんと人の話を聞ける人間でなければいけないし、つまり考える力がなければダメなんですよね。だから、そういうふうなところを僕らは何とか彼らに気付いてもらいたいということでずっと指導している。」(山田監督)

人間力の指導に憧れて前橋育英に入ってきたのが、今年のキャプテン、徳永涼だ。

「山田監督には人間力ってところをすごく指導を受けて、自分がサッカーより大切なものを学べたし、それがサッカーにも生きると思うので、すごい感謝しています。」(徳永キャプテン)

同世代の指導者は第一線を離れる中、今もなお熱い指導を続ける。同い年で、三重県の強豪校四日市中央工業を長年率いていた樋口士郎さんは、山田監督をこう評する。
「選手育成のところに関して確固たる信念があって、人間性の部分をすごく大事にしながら耕介はそれでいて良い選手をずっと輩出するとともに結果を残していると。そのへんがただの指導者じゃないなと教育者的なところをすごく感じますね。我々はもう定年で現場を離れてるという観点で見るとまだまだ第一線でやってるの羨ましいなと。」(樋口さん)

これまでに輩出したプロは106人。このうち現役は52人。元日本代表の細貝萌選手もその1人だ。
「実際プロサッカー選手として長く今までやっていますけど、あそこで山田先生が自分のポジションをボランチに下げてくれたというところは、間違いなく自分自身のサッカー人生に関わってきてるなと思いますね。」(細貝選手)

見いだされた守備的な才能。現在も地元・ザスパクサツ群馬でボランチとして活躍している。

「前橋育英に行って山田先生に教わって良かったなと思ってるし、逆にそうじゃなかったら今の自分はないと思っているので感謝しかないですね。もう一度人生を繰り返せるのであれば当然高校時代は、前橋育英に行きたいと思っていますし、その中でもっと自分から「こういうときはどうしたらいいですか」っていうのを山田先生に聞けば僕自身ももっとレベルアップできたんじゃないかな」(細貝選手)

夜、サッカー部の寮には、監督の姿が。親元を離れてサッカーに励む選手たちを見守りたいと週に数日は泊まっている。こうした毎日をどうして40年以上続けることができるのか聞いてみた。

「本気に向き合わないと彼らの本気度は上がってこないので、こっちも本気を出して根気強くやったのが今につながっていると思います。でやっぱりですね、小嶺先生の影響はものすごく大きいと思います。本当に厳しくて、しかし愛情とか熱意とか感じてましたのでその3年間が大きくて、そんな指導者に自分もなりたいなって思ったんでしょうね。」(山田監督)

恩師・小嶺監督から学び取った「本気を根気強く」の精神で、40年以上、前橋育英一筋で選手に向き合ってきた山田耕介63歳。情熱の炎が灯る限り、本気の指導はこれからも続く。

第101回全国高校サッカー選手権大会1回戦
12月29日(木)12:05kick off
前橋育英×日章学園(宮崎)



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